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みなくち子どもの森自然館

「甲賀市レッドリスト2022」の策定

 甲賀市として4回目(2007、2012、2017年に続き)のレッドリスト策定です。甲賀市版レッドリストは、地域の自然環境の特性や実態に合わせて、生物種の生息状況から自然環境の変化を把握し、その保全に役立てることが目的です。これまでの年経過による生息状況の変化や調査進行による新たな種の発見があり、リストを更新しました。

<ページ末尾に分類別のレッドリストと概説のPDFを添付しています>

 また甲賀市レッドリストの調査は、専門家や専門業者が短期間に行うものでなく、市民からの日常的な情報や写真の提供、市内で調査を実施している内外の専門家や有識者からのヒアリングに基づいています。甲賀市の自然博物館(みなくち子どもの森自然館)が編集しました。

○ 各分野の策定の担当者、協力者の氏名・団体名 (300KB)

 

調査報告の作成

 なお、今回のレッドリスト策定と並行して、各分野の各種の生息状況についての調査報告を作成しました。これまでの記録や知見を資料として残す意味があり、情報をまとめて確認できる意義があります。しかしながら、希少種の分布地にかかわる情報が多く掲載されるため、ホームページへの掲載は行わないことになりました。そのため、自然館の資料として保管し、閲覧や複写の申請をいただき、使用目的が適切と認められた場合に、情報を提供します。閲覧や複写を希望される方は、「みなくち子どもの森自然館」まで、お問合せください。

 

「甲賀市レッドリスト2022」の成果から分かった、現在の甲賀市の自然環境

 今回および前回までのレッドリスト調査結果から、以下のような市内の自然環境の概況が見えてきました。

○里山の草地と草地性の動植物の減少

 市内の甲賀丘陵・水口丘陵・甲南丘陵の里山周辺では、以前のように定期的な森林や草地の手入れがなされず、明るい草地や開けた林縁の環境が急速に減少して、暗いヤブやうっそうとした森林に変化してゆきます。山際での耕作放棄地の増加とも重なります。

・絶滅種となったオキナグサ、ユウスゲをはじめ、秋の七草のキキョウ、オミナエシ、カワラナデシコもリストに入ります。ワレモコウ、クサボケ、リンドウ、イワナシなど、古くは生活に身近だった花々の生息環境は限られてきました。甲賀市の花「ササユリ」も各地で保全活動がなされますが、雑木林周辺の明るい草地に群生する風景は、今では一部の地域にしか残りません。

・一方で、市内の里山は地形の変化に富み、管理に熱心な地域や農家もあり、他では失われた植物の多様性が高い草地も残ります。

・ススキやチガヤなどイネ科の草で巣をつくるカヤネズミの生息地が減少傾向ですが、市内では農地やため池堤の草地に見かける地域は広く残ります。市内のあちこちで、春の麦畑の上空にヒバリが飛ぶ姿を見かけます。

・ギンイチモンジセセリ、ウラギンスジヒョウモン、ウラナミジャノメなど草原性のチョウ類が絶滅・減少しました。

コラム1)甲賀の自然環境と絶滅危惧植物に思う(東 正也さん) (390KB)

コラム2)人が関わることで守られる草地環境(中村久美子さん) (580KB)

コラム3)甲賀町のチョウ今昔(森地重博さん) (615KB)

○森林の成熟と生き物の変化

 里山の雑木林では50~60年前まで定期的に伐採がなされましたが、現在は放置される場所が多く、アカマツの松枯れ、大木となったコナラのナラ枯れなど、衰弱木が目立ちます。一方で大木が増えただけでなく、カシなどの常緑の広葉樹の割合も増えました。スギやヒノキなど植林された木も大きく育ってきました。

・野洲川周辺の丘陵地では、タブノキ、ツクバネガシ、アラカシなどが繁る照葉樹林(常緑広葉樹林)に近い環境が出現してきました。

・キビタキ、オオルリ、コサメビタキ、サンコウチョウ、キバシリなど成熟した森林にすむ小鳥の分布域が増えています。

・オオムラサキ、コカブトムシ、オニツノゴミムシダマシなど森林性の昆虫類が市街地付近でも発見されるようになりました。

・河川沿いなどの樹林では、モウソウチクやマダケなどの竹林が急速に拡大しています。

・山間部の大きく育ったスギやヒノキの枝に着生するカヤランなどの植物が増えた事例があります。スギやヒノキの枝が枯れ落ちた跡に洞ができて、ニホンモモンガや野鳥のすみかとなったケースが観察されています。

○大型哺乳類の増加と生態系への影響

 鈴鹿山脈の森林では、この十数年のニホンジカの爆発的な増加によって深刻な影響が現れました。市街地付近の甲賀丘陵・水口丘陵・甲南丘陵の雑木林では、見通しの悪い森林が増加したことから、イノシシやニホンジカの生息範囲が拡大し、人間との摩擦(獣害)が増えました。

・ニホンジカの増加により、シカの行動しやすい場所では、林床の草本や低木の大半が食べられて、確認できなくなった植物があります。

・急減した植物を食べるチョウ類の減少が起きており、草や低木の中に営巣する鳥類も繁殖場所を失っています。

・イノシシやニホンジカの生息範囲が拡大し、農産物が被害にあうことが増えました。

・大型哺乳類の増加にともない、鈴鹿山麓ではヤマビルが人家の庭先にいたり、市街地付近でもマダニ類の確認事例が目立ったりします。

・哺乳類の糞(フン)を餌とする美しい甲虫、オオセンチコガネの分布も拡大しています。

○水田、池沼、湿地、小川など水辺の動植物の減少と生態系の劣化

・市内には粘土質の土壌が多く、水田付近に水たまりや湧き水のある地域も多いため、魚類のメダカやドジョウ、両生類のナゴヤダルマガエルやニホンアカガエルなど、他では減少した生物の生息地が残っています。

・ミズオオバコ、ジュンサイ、ヒツジグサ、コウホネ類、タヌキモ類などの水草の減少が明らかで、水田、湿地やため池に浮葉や沈水型の水草がある場所は限られます。これは水田付近では除草剤が、湿地やため池ではアメリカザリガニの侵入の影響が大きいと考えられます。一方、安定した湧水のある水路や小川では、ヤナギモ、ホソバノミズヒキモ、ヤマトミクリなどの繁茂する地域が残っています。

・水田や湿地、ため池などにすむトンボ類、ゲンゴロウ類やガムシ類などの止水性の水生昆虫の減少が止まりません。生息地や産卵場所となる水草の減少、アメリカザリガニ、オオクチバスによる捕食の影響が大きいと考えられます。

○野洲川・杣川・大戸川・信楽川の生態系

・市内の大きな河川は、鈴鹿山脈や信楽山地の豊かな森林とその土壌によって生み出された、きれいな水を源流とします。渓流ではカジカガエルの鳴く場所があり、イワナ、タカハヤなど渓流魚やカワガラスも棲みます。ヤマセミの急激な減少の要因が気になります。

・野洲川では、市街地に近い中流域においても、毎年の増水によって細かな泥や汚れが流され、川底や河原にきれいな石礫や砂の堆積が広がり、そうした石礫や砂利の隙間を通った汚染されない地下水が周囲に提供されるなど、河川の自然生態系が保全されています。

・野洲川の石礫の広がる河原には、カワラハハコ、カワラバッタなどの厳しい環境に適応した植物や昆虫が生息しています。

・野洲川や信楽川など石礫が多い河川では、石の隙間に隠れたり、石礫の堆積中に潜ったりして生活する魚類(アジメドジョウ、アカザ、カワヨシノボリ)が生息します。野洲川では全国的に記録が限られるカスミハネカの生息も確認されました。

・杣川や大戸川では砂の堆積が多く、そうした河川環境を好む、魚類のシマドジョウやカマツカの仲間、トンボ類のホンサナエ、キイロサナエ、キイロヤマトンボなども生息します。

コラム4)崖っぷちのタカハヤ(中谷成一さん) (560KB)

コラム5)甲賀市のキイロヤマトンボの未来(井野勝行さん) (530KB)

コラム6)野洲川河川敷のバッタ調査(南 尊演さん) (510KB)

○水辺の外来種による深刻な影響

・アメリカザリガニによる湿地や池の生態系への影響が甚大です。県の保護区である油日の湿原周辺では、この十数年の間に侵入したアメリカザリガニによって、ヒツジグサやフトヒルムシロなど水草が減少し、オオイトトンボ、モートンイトトンボ、クロゲンゴロウやガムシといった水生昆虫が大幅に減少しました。

・ため池にオオクチバスの違法放流が続いており、ウシガエルの生息域が市内に広がっています。モツゴやカワバタモロコといった希少魚類、トンボやゲンゴロウ類などの水生昆虫が豊富にみられる池沼は数少なくなりました。

・野洲川や杣川の本流ではダム湖に放流された北米原産のコクチバスの分布が拡大中で、アユなど在来種を脅かしています

・市内で急増した北米原産のアライグマによって、両生類のヤマトサンショウウオが捕食され、個体数が激減した場所があります。

・10年前はニホンイシガメが多くみられた市内の池で、ミシシッピアカミミガメの姿が目立ちます。ニホンイシガメはアライグマにも襲われています。

コラム7)甲賀市のヤマトサンショウウオに迫る危機(河原 豪さん) (460KB)

○鳥類と人との軋轢

・サギ類(:アオサギ、ダイサギ、チュウサギ、ゴイサギなど)の集団繁殖地(コロニー)が水口地域と甲南地域に存在しますが、近隣住民との軋轢(鳴き声やフン、臭い)があるため、地域からの追い出しが繰り返されています。集団サイズが小さくなっており、特にチュウサギやゴイサギが減少しました。人家から離れた樹林などに繁殖地が移ることが望まれます。

・カラス類(甲賀市ではハシボソガラスが多い)の集団のねぐらが秋から冬に市街地付近に形成され、近隣住民とのトラブルが生じています。

・市街地の街路樹や電線にムクドリやハクセキレイの集団のねぐらも生じて、苦情が出ています。

○近年、新たに市内の生息が確認された種類など

・希少な哺乳類のニホンモモンガ、ミズラモグラが市内の山林で発見されました。

・野洲川にすむ魚類カマツカの仲間が、新種ナガレカマツカとして発表されました。

・古く記録にあったビワマスが2016年以降、毎年安定した個体数で野洲川を遡上し、市内で産卵するようになりました。

・コケの中にすむ微小で美しいカメムシのマルグンバイが市内で記録されました。

・全国的に珍しいカスミハネカが野洲川に生息することが判明しました。

・クモ類の調査の進展(:ヒトエグモ、カトウツケオグモ、トゲグモの発見)がありました。

コラム8)米粒より小さな昆虫ーマルグンバイ(山本雅則さん) (430KB)

 

甲賀市レッドリスト2022

植物(維管束植物)

○ 甲賀市レッドリスト2022「植物」 (210KB)

○ 甲賀市レッドリスト2022「植物」の概要 (460KB)

哺乳類

○ 甲賀市レッドリスト2022「哺乳類」 (150KB)

○ 甲賀市レッドリスト2022「哺乳類」の概要 (490KB)

鳥類(繁殖鳥類)

○甲賀市レッドリスト2022「鳥類(繁殖鳥類)」 (180KB)

○甲賀市レッドリスト2022「鳥類(繁殖鳥類)」の概要 (620KB)

両生類:カエル、サンショウウオ

○甲賀市レッドリスト2022「両生類」 (150KB)

○甲賀市レッドリスト2022「両生類」の概要 (570KB)

爬虫類:トカゲ、ヘビ、カメ

○甲賀市レッドリスト2022「爬虫類」 (120KB)

○甲賀市レッドリスト2022「爬虫類」の概要 (300KB)

魚類

○甲賀市レッドリスト2022「魚類」 (136KB)

○甲賀市レッドリスト2022「魚類」の概要 (403KB)

昆虫類

○甲賀市レッドリスト2022「昆虫類」 (200KB)

○甲賀市レッドリスト2022「昆虫類」の概要 (360KB)

その他の陸生無脊椎動物:クモ、ミミズなど

○甲賀市レッドリスト2022「その他の陸生無脊椎動物」 (110KB)

○甲賀市レッドリスト2022「その他の陸生無脊椎動物」の概要 (280KB)

陸産貝類:カタツムリ

○甲賀市レッドリスト2022「陸産貝類」 (110KB)

○甲賀市レッドリスト2022「陸産貝類」の概要 (420KB)

淡水貝類:水生の二枚貝、巻貝

○甲賀市レッドリスト2022「淡水貝類」 (90KB)

○甲賀市レッドリスト2022「淡水貝類」の概要 (680KB)

 

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