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甲賀の前挽鋸(甲南ふれあいの館)
甲賀の前挽鋸(甲南ふれあいの館)

前挽鋸(まえびきのこ)とは、木材を縦に挽いて柱や板に加工する一人挽きの縦挽き鋸で、機械製材が普及する以前は、木挽(こびき)と呼ばれる職人によって、ひろく使われた道具です。今ではその姿は博物館などでしか見ることができませんが、甲賀市域は近代までこの前挽鋸の全国有数の産地として知られていました。

柱や板を製材するには、原始時代以来ながくクサビで打ち割る方法が用いられましたが、中世には大鋸(おが)と呼ばれる二人挽きの鋸が中国から伝えられ、さらに近世初期には建築需要の増大を背景に、一人で挽ける前挽鋸が考案されました。その主産地は京都でしたが、やがてその技術はここ甲賀にも伝えられ、少なくとも19世紀前半には複数の製造家が成立したようです。これは一帯に「甲賀大工」や「甲賀木挽」とよばれる木にかかわる職人が多く住んでいたことと関係があると思われます。

特に水口町南部から甲南町にかけての杣川(そまがわ)流域の町や村には明治以降製造家や問屋が密集し、生産も分業体制で行われ、地場産業として確立します。その品質は全国に聞こえ、販路は日本国内はもちろん、朝鮮や樺太、中国大陸におよびましたが、昭和にはいると機械製材が普及して急速に衰退します。

甲賀市の「甲南ふれあいの館」には、これらの製造家に伝えられた、前挽鋸の材料・工具・仕掛け品・帳簿などの販売資料、そして当地の木挽が実際に使った道具としての前挽鋸などが大量に保存されており、「近江甲賀の前挽鋸製造用具及び製品」として国の重要有形民俗文化財に指定され、公開されています。古代、甲賀は都に用材を供給した「甲賀杣(こうかのそま)」が置かれた由緒ある土地です。そこに根付き、全国的なシェアを獲得した地場産業の歴史を、ぜひ記憶しておきたいものです。

詳しくは『甲賀市史』第6巻をごらんください。

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