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 本日、令和6年第4回甲賀市議会臨時会の開会にあたりまして、議長のお許しをいただきましたので、市政に対する私の所信の一端を申し述べ、議員各位をはじめ市民皆様のご理解、またご協力を賜りたく存じます。

 この度の市長選挙におきましては、無投票という結果でありましたが、三期目を託していただいたこと、大変光栄に存じますとともに、心から感謝を申し上げます。
 改めてその責任の重さに身が引きしまる思いであり、これまでの8年間の経験を糧に、初心を忘れることなく、顔の見える市長として市民の皆様との対話を大切にしながら、全身、全霊で市政運営に取り組む所存でございます。

 そして、この度、甲賀市議会議員補欠選挙におきまして、ご当選された糸目仁樹議員、村木慶太郎議員、出口雅之議員におかれましては誠におめでとうございます。甲賀市発展のため、ご活躍されますことを心よりお祈り申し上げます。

 さて、今回の選挙戦は1日という短期間であったため、私がめざす政策やこれからのまちづくりへの思いを十分にお伝えすることが出来なかったこと、課題として受け止めております。まずは、これから4年間の市政運営について市民の皆様に、しっかりとお伝えをすることから三期目をスタートさせていただきたいと考えております。
 私が市長に就任させていただいてからの8年間を見ましても、社会をとりまく環境は大きく変化いたしました。少子高齢化の急速な進展、能登半島地震や度重なる豪雨をはじめとする自然災害、地球温暖化による環境リスクの増加、不安定化する国際情勢、約30年ぶりの物価上昇、生成AI等の登場による急激なデジタル化の進化、情報技術の進展、そして3年余りに及んだコロナ禍は、私たちの価値観や行動様式に大きな変容をもたらし、日本の社会構造や文化、経済に多大な影響を及ぼしました。また、先の衆議院議員選挙においては、与党が議席の過半数を下回り、今後の国政の不安定化も大変危惧されるところでございます。

 しかしながら、このような先の見えにくい時代だからこそ、市民の皆様の生活の現場をお預かりしている基礎的自治体としての気概と、誰一人取り残すことなく、様々な課題を乗り越えていく想像力、行動力、解決力、そして現場力が今、市役所に求められています。そしてこのような時代だからこそ、市役所だけではなく市民の皆様のなお一層のご理解とご協力を仰ぐことが不可欠であります。市が保有する情報はもちろん、外部から収集した情報も含め、市民の皆様と共有をし、対話を重ねることで、各種施策を磨き上げ、また、前例にとらわれることなく新たな施策に挑戦をし、市民の皆様とともに時代の荒波を乗り越えてまいりたいと考えています。
 本年、甲賀市は、市制施行20周年を迎えることができました。これも、先人から引き継いだ多くの財産に助けられ、支えられた20年であったと感謝の念に堪えません。そして、今を生きる私たちは、次の20年に向けて何を残すことができるのか、今どんな種をまいておく必要があるのか、甲賀市の未来を切り開くために、これからの4年間は、次の20年に向けた確かな一歩を踏み出す、大変重要な時期になります。
時代の変化だからやむを得ないと課題を先送りするのではなく、時代の変化に対応し、時代の先を読む力を磨き、若者や子育て世代を中心とした本市の将来を担う世代から「選ばれるまち」となるべく、施策をさらに充実、また加速させていく必要があります。市内外のあらゆる資源とつながり、創意工夫と柔軟な発想のもと、「オール甲賀」で未来に確かなバトンを渡さなくてはなりません。

 私はこの度の市長選挙において、これまでの8年間、市民の皆様との対話をはじめ議会の皆様からいただきましたご意見やご提案、また、庁内において課題となっていた20分野58施策を公約とし、これら施策を確実に前に進めることを市民の皆様とお約束をさせていただきました。
 その内容につきましては、これまで取組んでまいりました3つのテーマ「子育て・教育」、「地域経済」、「福祉・介護」を更に前に進めること。加えて、まちづくりの新たなポイントとして「新しい豊かさ」、「暮らしの余白」「甲賀スタイル」「若者・子育て世代に選ばれるまち」に欠かせない施策を重点的に進めることをお約束しております。
 また、公約と合わせて、特に私がこの4年間で市民の皆様に理解をいただきながら進めなければならない4点について、まずお話をさせていただきます。

 1点目は、「地域共生社会の実現」です。近年における核家族化の進展や地域社会の希薄化は、コロナ過を経てますます加速しています。市民の生活環境、様式も大きく変化をする中、この20年間で、市内高齢者の一人世帯は、約2,000世帯から約5,500世帯に、不登校の生徒数の割合は1.64%から4.66%に増え、「ひきこもり」「居場所の無い子ども」「8050問題」「ひとり親家庭」、また子育て家庭が社会からの支援とつながりを持つことができず地域の中で孤立する傾向が見受けられるなど、孤立化を背景とする市民の皆さんが抱える課題はより一層多様化、深刻化しています。社会的孤立が喫緊の課題とされる地域社会において、血縁、地縁、社縁につづく第4の縁による「つながりや」や「支えあい」を創造し、市民生活をお守りする最後の砦である市役所として、相談を待つだけではなく、アウトリーチで、誰一人取り残さない地域共生社会を作りたいと思います。そのためには区・自治会に加え自治振興会の更なる機能の強化も必要になってまいります。

 2点目は、「公共施設の合理化」であります。先人の皆様のご尽力により整備され活用してまいりました公共施設でありますが、今ある公共施設の全てを維持する為には、今後40年間で約1,100億円の改修・更新費用が見込まれており、大変変厳しい状況となっています。公共施設の縮小や統合は市民の皆様の大きな感心事でもあり、様々なご意見、ご批判を受ける対象テーマとなってまいりますが、将来の甲賀市の姿を考えたとき、大きな負担を、過度な借金を将来に残すことをわかっていながら次世代に先送りすることはできません。将来、市民の皆様、今いる子どもたちが困らないよう、公共施設の適切な配置について、しっかりと議論し、公共施設等総合管理計画や今年度見直しを行います幼保・小中学校再編計画に基づき着実に取り組みを進めてまいります。

 3点目は、「未来への投資」であります。今後も進めます、名神名阪連絡道路の整備、JR草津線沿線の住宅整備、新名神高速道路沿線の工業団地や商業施設の受け皿となる土地の整備、貴生川駅周辺の再開発など、地域が発展するための重要なプロジェクトへの投資、20年後の将来を見据えた未来につなげる投資であります。これらは4年後に必ずしも形になるものばかりではありませんが、今、種をまくことは、将来の甲賀市が発展するための大きな糧となるものであり、逆にこうした未来への投資なくしては、福祉や教育の充実を図ることは財政面で難しくなることから、未来への投資を戦略的に、積極的に進めていく考えであります。

 最後に4点目は、「市役所力の強化」であります。国や県の省庁に合わせたこれまでの組織では、市民の皆様に一番身近である市役所の職員が現場において直面する多様化・複合化する市民ニーズに対応することが困難な時代になっていると考えております。目まぐるしく変化し続ける現代社会の中で、多様化・複合化する市民ニーズや課題に対応するためには、現場力の更なる強化が必要であり、市民生活、サービス向上を第一義とした組織づくりを目指し、縦割り行政でない、機能的で市民の皆様のために動ける組織づくりを行い、組織力を最大化できる行政組織を再構築してまいります。合わせて職員の人材育成、ひとづくりを重視し、労働環境の改善にも努めながら、職員力の向上にさらに力を入れ市役所力の強化に取り組んでまいります。

 それでは、私が今後4年間、決意をもって進めてまいります、主な施策について申し上げます。

 まずは、地域の実情に応じたきめ細やかな住民自治の実現であります。今、自治会の組織運営は地域の担い手不足などにより多くの課題を抱えています。人口減少社会に対応する自治振興会、区・自治会への支援と住民自治の仕組みづくりを更に進めます。
 また、多様な価値観を認め合うダイバシティ社会、地域経済を支える外国人市民が、地域社会の構成員として活躍する多文化共生による暮らしやすい地域づくり、だれもがお互いを尊重しあい、性別にかかわらず、ともに活躍できる男女共同参画の推進にとりくんでまいります。
そして、暮らしの中の事故やケガ、防犯等の予防対策を強化するとともに、再犯防止等の取組を進め、併せて、災害に強いまちづくりを進めるため、消防力を強化し、地域防災体制の再構築、市内での災害発生時に実効性のある災害時受援体制を構築するとともに、上下水道事業の効率的、安定的な経営を図り、ライフラインの強化に努めます。

 次に、「子育て・教育」についてであります。
「子育て・教育NO.1」の実現に向け、子どもや子育て世代の希望に応える、ライフステージに応じた切れ目ない支援を充実させてまいります。
特に支援の必要な妊産婦や乳幼児の家庭、複合的に課題を抱える家庭への支援の強化や多様化する教育・保育ニーズに対応できる環境整備、保育の質の向上、幼児教育の推進に取り組むとともに、放課後保育需要に対応した児童クラブの充実を図ってまいります。
また、若者の結婚・就業・起業などを応援するとともに、若者への情報発信を強化することにより、生産人口の定住促進、市外流出の抑制、交流人口、Uターンの増加につなげてまいります。
学校教育では、教育予算の充実を図り、児童生徒の学ぶ力を高め確かな学力を育成してまいります。また、将来にわたりより良い教育環境を提供できるよう、これまでの地域との対話による課題を踏まえ、地域性を配慮した小中学校再編計画を推進します。
 不登校や不適応で不安や悩みを持つ児童生徒に対して、スペシャルサポートルーム(SSR)、教育支援センター、フリースクール等、多様な居場所や学びの場等の環境整備とともに、状況に応じた支援の充実に取り組みます。
社会教育では、地域学校協働活動の推進支援や自治振興会による社会教育事業の支援等を行い、より多くの市民の方に社会教育施設をご利用いただけるよう環境を整え、地域づくりにつなげるとともに、学校や関係機関、地域や団体と連携し、青少年の健全育成に係る取り組みを進めてまいります。
 そして、本市独自の歴史や文化財、伝統文化等を次世代に適切に引き継ぐための活動を支援し、美しい農山村の景観を有する里地里山や歴史的なまちなみなどのふるさとの景観の保全と活用により地域の魅力を発信します。
 また、市民が文化芸術に親しむ機会の提供や、文化施設の有効活用などにより、文化や芸術に親しみ暮らしの中に根付いた地域づくりに取り組みます。加えて次年度開催されるわたSHIGA輝く国スポ障スポを契機としスポーツを通して健康で豊かな活力ある暮らしを促進するため、スポーツに関わる施設や運営団体の環境を整え、様々なスポーツ振興に取り組んでまいります。

 次に、「地域経済」についてございます。
 農業分野では、担い手の確保、育成を支援することで、農業就労者の確保に取り組み、持続可能で安定的な生産体制の基盤や仕組みづくり、自立できる農業を推進してまいります。また、地産地消や観光消費、販路開拓、給食等への活用により、地場作物の市場性やブランド価値を高め、農家の所得向上につなげます。
また、全国植樹祭を契機とした、持続的な森林整備や林業振興に取り組み、循環型林業の推進と担い手の育成を促進します。
 鳥獣害対策では、野生鳥獣による農林業被害や住環境被害を軽減するため、捕獲・防除・生息環境管理の対策を強化するとともに、地域ぐるみでの対策を支援してまいります。

 商工観光では、市内企業・事業所の事業継承や人材確保および就労困難者をはじめとする各世代、分野別の求職者への就労支援に努めるとともに、ワーク・ライフ・バランスを推進します。また、GXに関する取り組みやDXによる生産性向上等の取り組みを支援し、新たな工業用地の確保や優遇策の拡充を図るなど、企業の流出抑制とさらなる企業誘致を加速させてまいります。
 地場産業では後継者確保を支援するとともに信楽焼やお茶・酒・薬等の今ある地域資源の効果的な連携を進め、ブランド力の向上と販路開拓支援に取り組んでまいります。

 観光振興では、忍者を核とした観光拠点施設を活用し市内周遊型観光を推進し、市民主体の観光まちづくりに取り組み、新たに整備する道の駅を拠点とする地域振興に努めるとともに、2025年開催の大阪・関西万博を契機とした市内へのインバウンド、またゴルフ事業などとも連携し多角的視点をもった誘客促進に取り組んでまいります。
道路整備では、名神名阪連絡道路の早期事業化と広域幹線道路網の整備を促進し、都市基盤の維持・形成のための幹線道路の計画的・効率的な道路整備を進め、生活道路等の整備や適正管理、日常の暮らしと経済活動を支える地域公共交通の持続可能性を確保します。また、JR草津線、近江鉄道、信楽高原鐡道の利用促進に取り組み、市内に14ある駅を中心とした地域活性化に取り組みます。
 そして、貴生川駅周辺などの拠点を形成する市街地整備を推進するとともに、近畿圏と中部圏をつなぐ広域交通拠点である地理的優位性を活かした物流拠点施設など新たな市街地産業用地の確保を図りながら、良好な住環境の確保とともに、空家対策を更に進め、移住促進等につながる施策に取り組みます。
 また、環境未来都市「こうか」の実現に向けて、豊かな自然を守り、環境と経済、社会活動が調和した持続可能なまちを、未来の子どもたちに引き継ぐため、脱炭素やネイチャーポジティブに取組み、本市の恵まれた豊かな自然環境を守りながら持続的な形で活用することにより、地域の特色を活かし環境を軸としたまちづくりの魅力向上を図ってまいります。

 次に、「福祉・介護」についてであります。
 最初に申し上げました「地域共生社会の実現」に加え、高齢者が社会を支える一員として活躍でき、住み慣れた地域で自分らしい生活が営めるよう、高齢者やそのご家族の暮らしを守るための支援充実を図り、加えて、支援が必要な障がいのある人が住み慣れた地域で生活できるよう更なる取組みを進めます。
 また、全てのライフステージにおいて、健康で生きがいを持って生活できる環境づくりや食育による健康づくり、疾病予防、早期対策など、市民の健康と生命を守る取り組みを強化し、医療従事者の確保と合わせた医療環境、包括的な地域医療体制の充実を図ります。

 最後に、行財政改革であります。
 市に関する様々な情報を戦略的に発信することにより、施策の効果を最大限に発揮するため、広報力の強化やデジタル媒体の積極的な活用などを目ざした戦略方針を策定し、シティプロモーションの強化を図ります。
また、職員の政策形成能力、専門的な知識の向上等に努め、中長期的な視点からの人材育成、多様な人材の確保に取り組み、官民連携やDXを推進し行政運営の最適化を図ってまいります。
 そして、市民との対話により公共施設総合管理計画等の着実な実施とインフラ、土地を含めた一体的な公有資産のマネジメントを推進し、中長期的な財政計画と実施計画の連動により、新たな財源の確保や民間活力を活用することで、持続可能な行政運営を実現してまいります。

 自然あふれる甲賀の地で、地域のアイデンティティや誇り、脈々と受け継がれてきた歴史、そして先人たちが暮らしの中で積み重ねてきた文化・芸術などの「甲賀らしさ」をバックボーンとし、質の高い暮らしが生み出す、経済的、時間的なゆとりである「暮らしの余白」を、自分自身が叶えたいライフスタイルで埋めていく。
そうした暮らしやライフスタイル、繋がりを「甲賀スタイル」として磨き上げてまいります。いつもの暮らしに「しあわせ」を感じ、自分らしさを表現できる、ウェルビーイングの実現、そのような新しい生き方、新しい家族の在り方を包摂した「新しい豊かさ」を市民の皆様に実感いただけるまちづくりを全力で進めてまいります。
 二元代表制のもと、徹底的な議論を行い、第2次甲賀市総合計画第3期基本計画の実現を目指し、市政発展のため確固たる決意と覚悟をもって市政運営に取り組んでまいりますので、市議会議員の皆様はもとより、市民の皆様には格別のご理解、またご協力を賜りますよう心からお願い申し上げ、三期目のスタートにあたっての私の所信の表明といたします。

                                令和6年11月8日 甲賀市長 岩永裕貴