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●電子展示 信楽焼を支える粘土と長石の鉱山

 信楽で焼物が作られるようになった要因はいくつかありますが、やはり焼物に適した良質の土が採れることがあげられます。ここでは、信楽焼を支えてきた鉱山をご紹介します。
 焼物に適している土の条件として、粘り、腰の強さ、滑りのよさ、のびのよさが挙げられます。信楽の土は乾燥させてから粉砕すると腰の強さが出てきます。素地(きじ)に含まれる角張った砂粒が、骨材として働き変形を防ぐため、タヌキの置物などの大きな物を作ることができます。一方で、水と混ぜてから粉砕した信楽の土は、丸みを帯びた細かい粒子を多く含んでおり、滑りとのびのよさが特徴です。ロクロによって食器や煎茶器などの小物を作るのに適しています。
 薪窯(まきがま)の炎により土の表情が変化する窯変(ようへん)も信楽焼の見所です。たとえば、石英の粒のまわりに亀裂が生じる「石はぜ」、長石が熔けて粒状のガラスになる「蟹(かに)の目」、素地の鉄分が赤茶色に変化する「火色(緋色)」などの窯変があります。

 信楽では蛙目(がいろめ)粘土、木節(きぶし)粘土、実土(みづち)が採掘されます。蛙目粘土の名前の由来は、石英の砂粒を多く含んでおり、水にぬれると蛙の目のように光るためです。木節粘土の名前は亜炭に変化した植物化石を含むためです。
 明治5(1872)年に作成され、滋賀県庁と政府に提出された、幕末・明治初期の信楽焼に関する調査報告書には「二本丸・夏南保(かなんぼ)」の2か所から出る白い土を用いることが記されています。

三郷山大原鉱山跡

▲三郷山大原鉱山跡

 

 また黄瀬土(きのせづち)は信楽町黄瀬において採掘され、焼締(やきしめ)陶器のほか、江戸時代(17世紀)以降、京焼の原料として使われてきました。

 信楽町小川などで採掘される実土は粘りと腰が少なく、鉄分などの不純物が多いため単独では使われません。信楽焼はおよそ1250℃の窯で焼きますが、木節粘土はさらに高温でなければ焼締まらないので、耐火度が低い実土を木節粘土と混ぜることによって吸水率を下げています。

花崗岩
 信楽焼の土はどのようにしてできたのでしょうか。標高約400700mの信楽山地は信楽高原とも呼ばれ、中央には標高300mほどの信楽盆地があります。今から約7000万年前の中生代白亜紀、日本はまだ大陸の端にあり、恐竜が住んでいた時代です。その頃の信楽の地下に入り込んだマグマがゆっくりと冷え固まって基盤となる花崗岩(かこうがん)ができました。信楽盆地の南側には領家帯の信楽花崗岩があり、盆地の北側には少し時代が新しい山陽-苗木帯の田上花崗岩があります。田上花崗岩のマグマの貫入にともない信楽花崗岩に熱水変質作用が生じました。地下でできた花崗岩は隆起や侵食の作用を受け地表にあらわれます。花崗岩は、地殻変動や気温の変化、風雨などの物理的な風化作用により石英や長石でできた真砂(まさ)とよばれる砂になります。また花崗岩に含まれる長石は、水による化学的風化作用によりカオリナイトなどの粘土鉱物に変化します。

花崗岩の分布

 

古琵琶湖層群
 現在の三重県の伊賀地方から滋賀県の南部に当たる場所に古琵琶湖層群(こびわこそうぐん)が形成されました。古琵琶湖は約400万年前に三重県の上野盆地において誕生し、上野層-阿山層-甲賀層-約200万年前の蒲生層と堆積盆地を移動させて現在の琵琶湖となりました。約400万年前の上野層に相当するのが図「花崗岩と古琵琶湖層群の分布」の槇山(まきやま)部層や中郷(なかざと)部層です。上野層の陶土層の上には伊賀層に相当する信楽礫層がのっていて、陶土が削られて無くなるのを防いでいます。南北約50kmにわたって分布している古琵琶湖層群には、深い湖の堆積物ばかりでなく沼や湿地の堆積物もあります。
 古琵琶湖が移動する長いあいだ、信楽でも古琵琶湖層が堆積していたことが火山灰の研究からわかってきました。黄瀬土は蒲生層の時代における低湿地の堆積物です。小川付近の実土は地質図では上野層の時代ですが、火山灰の研究から阿山層になる可能性もあるそうです(5万分の1地質図幅「水口」より)。
 なお日本六古窯のひとつである瀬戸も、領家帯と山陽-苗木帯の境界にある基盤の花崗岩が風化侵食を受け、蛙目粘土や木節粘土などの陶土が過去の湖に堆積したという点において信楽と共通しています。

 

花崗岩と古琵琶湖層群

 

〈法華鉱山〉

 

法華鉱山

 法華鉱山は、JR関西本線島ヶ原駅南東の伊賀市法花に位置し、ベンチカット法により木節粘土と蛙目粘土を露天採掘しています。古琵琶湖層群の上野層に相当します。

 鉱山を始めた頃はツルハシにより採掘をしていましたが、ベルトコンベアーを導入し、その後、ホイールローダー、油圧ショベルなどを使うようになりました。粘土は主に信楽へ出荷しています。

 

長石山
 信楽においては粘土だけでなく、花崗岩や花崗岩マグマにともなう貫入岩も採掘されています。滋賀県南部はアプライト(半花崗岩)の産地として知られています。アプライトは細粒の石英と長石からなる岩石で、黒雲母などの有色鉱物が少ないのが特徴です。石英と長石の比率は1対1程度ですが、信楽ではアプライトの鉱山を長石山と呼んでいます。長石山は甲賀市信楽町の神山、上朝宮(かみあさみや)、中野、畑(はた)、黄瀬と連なり、湖南市三雲(みくも)まで点在します。アプライトを粉砕したものはモザイクタイルや衛生陶器の原料になります。焼物の素地にアプライトを加えると、焼成時に融材としてはたらき製品の吸水率を低くします。また釉薬に使うことも可能です。滋賀県のアプライトは近畿地方有数の出荷量を誇る鉱産資源です。

〈雲井鉱山〉

雲井鉱山

 黄瀬に位置する雲井鉱山は、東西約500m、南北約200m、標高差約40mの露天においてベンチカット法により採掘をしています。原鉱を径15mm以下に粉砕し、タイルや陶磁器用の原料として出荷しています。

 

 

〈大福鉱山〉

大福鉱山

 大福鉱山は、雲井鉱山の北東に隣接しており、約300m四方、標高差数十mの露天において、鉱床の中央部を馬蹄形に開削して採掘が進められています。雲井鉱山と同様に、原鉱を径15mm以下に粉砕した後に、タイル、陶磁器、製紙、肥料用原料として出荷しています。

 

〈日産信楽長石鉱山〉

日産信楽長石鉱山

 神山にある日産信楽長石鉱山は約500m四方、標高差数十mの露天採掘場において、アプライトと曹長石(ナトリウムに富む斜長石)を含む信楽花崗岩を採掘しています。原鉱を粉砕・水洗した後、モザイクタイルの原料を主体とし、曹長石は衛生陶器、硫化鉄の多い部分は土木用資材として出荷しています。


〈参考文献〉
川辺孝幸・高橋裕平・小村良二・田口雄作1996「上野地域の地質」

(地質調査所『地域地質研究報告』5万分の1地質図幅京都(11)第53号NI-53-8-16)

甲賀市史編さん委員会編2013『甲賀市史』第5巻「信楽焼・考古・美術工芸」
甲賀市教育委員会2020『信楽焼の製造技術 民俗文化財調査報告書』
甲賀市教育委員会2020『信楽焼の製造技術 民俗文化財調査報告書 資料編』
甲賀市水口歴史民俗資料館・甲賀市土山歴史民俗資料館・多賀町立博物館2020

『信楽焼 ─ 〈わび・さび〉の美の秘密とヒストリー ─ 3館展示解説書』
滋賀県工業技術総合センター 信楽窯業技術試験場情報誌2000『陶』12号
中野聰志・川辺孝幸・原山智・水野清秀・高木哲一・小村良二・木村克己2003「水口地域の地質」

(独立行政法人産業技術総合研究所地質調査総合センター『地域地質研究報告』5万分の1地質図幅京都(11)第41号NI-53-8-15)
中野聰志・川辺孝幸・原山智・水野清秀・高木哲一・小村良二・木村克己2005

「湖南アルプス田上山地と焼き物の町信楽:5万分の1地質図幅「水口」『地質ニュース』612号

 

●連携展主催:

 滋賀県立陶芸の森、甲賀市水口歴史民俗資料館、甲賀市土山歴史民俗資料館、多賀町立博物館

 (助成:一般財団法人地域創造 協力:世界にひとつの宝物づくり実行委員会)

 

●連携展「信楽焼 〈わび・さび〉の美の秘密とヒストリー」※展示は終了しました

滋賀県立陶芸の森、甲賀市水口歴史民俗資料館、甲賀市土山歴史民俗資料館、多賀町立博物館の4館で連携し、信楽焼についての展示を行いました。

甲賀市内では水口歴史民俗資料館・土山歴史民俗資料館をそれぞれ水口会場と土山会場として展示を行いました。

甲賀市では茶業が盛んであり、特に信楽の朝宮と土山は主要な産地です。
甲賀のお茶と信楽焼の歴史は古く、中世後期、室町時代に甲賀の茶を荘園領主に進上する中で、信楽茶壺は生まれました。
また、江戸中期以降に流行する煎茶に合わせて信楽焼の煎茶器が生産され、明治以降は駅弁とともにお茶を入れて販売された汽車土瓶など信楽焼はお茶と関わり合いながら生産を続けてきました。

水口会場では茶壺を代表とする大物と煎茶器を成形する小物の技術を中心に、⼟⼭会場ではお茶に関わる信楽焼と製茶⼯程を紹介しました。

 

[開催情報]

「甲賀の茶と信楽焼のヒストリー ー 茶壺から汽車土瓶まで ー」

※展示は終了しました

 

●水口会場 rekeiten tenji

会期:令和2年9月19日(土曜日)~12月16日(水曜日)

場所:甲賀市水口歴史民俗資料館 第2展示室

開館時間:10時~17時(休館日:木・金曜日)

入館料 :大人150円 小・中学生80円
     ※毎週土曜日は市内小中学生とその同伴者は無料
     ※水口城資料館との共通券あり

 

 

 

 

 

 

 

 

●⼟⼭会場 renkeiten tutiyama

会期︓令和2年10⽉10⽇(⼟曜⽇) 〜 12⽉6⽇(⽇曜⽇)
場所︓甲賀市⼟⼭歴史⺠俗資料館 第2展示室
開館時間︓10時〜17時(休館⽇︓⽉・⽕曜⽇)

 

 

 

 

 

 

●連携展主催:

 滋賀県立陶芸の森、甲賀市水口歴史民俗資料館、甲賀市土山歴史民俗資料館、多賀町立博物館

 (助成:一般財団法人地域創造 協力:世界にひとつの宝物づくり実行委員会)

 

●連携館ホームページURL:

・滋賀県立陶芸の森

 https://www.sccp.jp/外部サイトへのリンク

 

・甲賀市水口歴史民俗資料館

 http://www.city.koka.lg.jp/2222.htm

 

・甲賀市土山歴史民俗資料館

 http://www.city.koka.lg.jp/5968.htm

 

・多賀町立博物館

 https://www.town.taga.lg.jp/akebono/museum/外部サイトへのリンク

 

renkeiten

  (チラシ:PDFデータ)

 

●展示目録:PDFデータ

 

●お問い合わせ先:

甲賀市水口歴史民俗資料館 

〒528-0005

滋賀県甲賀市水口町5638

電話:0748-62-7141 ※木・金曜日休館

甲賀市土山歴史民俗資料館

〒528-0211

滋賀県甲賀市⼟⼭町北⼟⼭2230

電話:0748-66-1056 ※月・火曜日休館


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